松村康生 京都大学 大学院農学研究科 農学専攻 品質科学講座 品質評価学分野 教授
松宮健太郎 京都大学 大学院農学研究科 農学専攻 品質科学講座 品質評価学分野 助教
安達修二 京都大学 大学院農学研究科 食品生物科学専攻 教授
三浦 靖 岩手大学 農学部 准教授
小川晃弘 三菱化学フーズ(株) 研究開発センター グループマネージャー
上野 聡 広島大学 大学院生物圏科学研究科 教授
本同宏成 広島大学 大学院生物圏科学研究科 講師
佐藤清隆 広島大学 大学院生物圏科学研究科 名誉教授
中村彰宏 不二製油(株) 研究本部 フードサイエンス研究所 第四研究室 室長
貝沼 謙 山崎製パン(株) 中央研究所 課長
片平亮太 食品技術研究所フーズ 代表
竹塚真義 森永乳業(株) 食品総合研究所 第3開発部 部長
宮部正明 不二製油(株) 知的財産室
武藤高明 雪印メグミルク(株) ミルクサイエンス研究所 主席研究員
川﨑功博 雪印メグミルク(株) ミルクサイエンス研究所 主査
宮地一裕 森永乳業(株) 食品総合研究所 第2開発部 部長
塩田 誠 雪印メグミルク(株) ミルクサイエンス研究所 主席研究員
田中礼央 雪印メグミルク(株) 商品開発部
寺田和典 森永製菓(株) 研究所 菓子研究開発センター 副主任研究員
井上琢也 森永製菓(株) 研究所 菓子研究開発センター センター長
孫本康広 森永製菓(株) 研究所 菓子研究開発センター キャンディグループ第一担当リーダー
木田晴康 不二製油(株) つくば研究開発センター 研究本部 フードサイエンス研究所 副所長,第2研究室 室長
井上孝司 (株)ポッカコーポレーション 商品開発本部 中央研究所 応用研究チーム マネージャー
黒川眞行 ネスレ日本(株) 製造サービス部 応用開発課 課長
有泉雅弘 キユーピー(株) 研究所 基盤技術センター 基盤技術グループ 主任研究員
谷原 望 ハウス食品(株) ソマテックセンター 製品開発三部 部長
現在,様々な食品の開発,加工において界面の制御とそれに伴う界面活性剤や高分子素材の使用は欠かせない技術となっている。乳化,分散,起泡・消泡,粉体の界面制御は食品の可溶化,風味強化,安定性向上などの効果をもたらし,数多くのアプリケーションが開発されてきた。近年は機能性食品・健康食品の市場が拡大しているが,市場が飽和状態へと移行しつつあり,今後は競争力確保につなげるため,確かな加工技術を基盤としたアプリケーション開発を進め,これらの食品の付加価値を更に高めていく必要がある。
こうした背景と,食品の界面制御技術に関して基礎から応用までを包括した専門技術書が数少ないこと,食品の開発現場では教科書と実戦レベルで得られる知識・情報に乖離があり,これを埋める有用な技術書籍が必須であるという状況を踏まえ,現段階の新規応用技術を含めた書籍を発行し,研究開発へ役立つ情報をご提供したいと考えた。本書の内容に対して,食品あるいはその関連企業の研究者・技術者の方々が幅広い興味を持っていただくことにより,本書が実際の研究開発に少しでも役立てば幸いである。
第1章 液状乳化系食品
1 界面化学の基礎と乳化過程[Ⅰ](松村康生)
1.1 序論
1.2 乳化過程およびエマルションの安定性にとって重要な要因
1.2.1 界面張力低下能
1.2.2 ギプスーマランゴニ効果
1.2.3 静電的反発力
1.2.4 立体効果
1.2.5 吸着層の水和
1.2.6 強固なフィルム形成
1.3 乳化過程(エマルションの調製)
2 界面化学の基礎と乳化過程[Ⅱ](松宮健太郎)
2.1 はじめに
2.2 エマルションの安定性
2.2.1 エマルションの安定性とは
2.2.2 エマルションの不安定化の様式
2.3 エマルションの不安定化現象各論
2.3.1 凝集
2.3.2 クリーミング
2.3.3 合一・相分離
2.3.4 オストワルト成長
2.4 おわりに
第2章 固体分散系食品
(安達修二)
1 はじめに
2 脂質の粉末化
3 粉末化脂質の酸化過程
4 粉末化脂質の酸化過程の特徴を記述するモデル
4.1 粉末化脂質の酸化過程の特徴
4.2 浸透理論に基づく脂質の存在状態の考察
4.3 脂質と包括剤の相互作用を示唆するモデル
5 粉末化脂質の水分収着
6 粉体の粒子径
7 おわりに
第3章 気泡分散系食品
(三浦 靖)
1 はじめに
2 成分と構造から見た気泡分散系食品の位置付け
3 身近な泡沫の例
3.1 液体泡沫
3.2 固体泡沫
4 食品分野における泡沫科学の意義
5 泡沫科学の基礎
5.1 泡沫の構造
5.1.1 ドライフォームとウェットフォーム
5.1.2 泡沫構造の可視化
5.1.3 泡沫構造の定量化
5.2 泡沫の形成
5.2.1 Laplaceの法則
5.2.2 Plateauの法則
5.2.3 その他の法則
5.2.4 泡沫の形成法
5.3 泡沫の粗大化
5.3.1 スケーリング則
5.3.2 Neumann則
5.3.3 混合気体泡沫の粗大化
5.4 泡沫の排水
5.5 泡沫の崩壊
5.6 泡沫の物性
5.6.1 力学的物性
5.6.2 電磁気的物性
5.7 起泡性の評価法
5.8 消泡・脱泡
5.8.1 物理的な消泡・脱泡
5.8.2 化学的な消泡・脱泡
6 牛乳の起泡
第4章 乳化剤
(小川晃弘)
1 はじめに
2 乳化剤について
3 乳化剤の基本的な性質
3.1 界面活性剤としての性質
3.2 HLB
3.3 乳化剤の水中での挙動
4 乳化剤の種類と性質
4.1 グリセリン脂肪酸エステル
4.2 レシチン
4.3 ショ糖脂肪酸エステル
4.4 その他の乳化剤
5 乳化剤の分析
6 乳化剤の機能
6.1 界面活性能に基づく機能
6.2 油脂との相互作用
6.3 澱粉との相互作用
6.4 タンパク質との相互作用
7 食品における乳化剤の使い方
8 おわりに
第5章 油脂
(上野 聡,本同宏成,佐藤清隆)
1 はじめに
2 O/Wエマルション界面における油脂結晶化
3 オルガノゲルと界面制御
3.1 分子集合体ネットワーク
3.2 固体粒子ネットワーク
第6章 高分子
1 タンパク質(松村康生)
1.1 はじめに
1.2 乳タンパク質
1.3 卵黄タンパク質
1.4 小麦グルテン
2 多糖類(中村彰宏)
2.1 はじめに
2.2 水溶性大豆多糖類
2.2.1 原料:大豆と大豆食物繊維
2.2.2 製造方法
2.2.3 基本的性質
2.2.4 分子構造
2.2.5 乳化機能と乳化のメカニズム
2.2.6 気泡安定化能
2.3 アラビアガム
2.3.1 起源と製造方法
2.3.2 基本的性質
2.3.3 分子構造
2.3.4 乳化機能と乳化のメカニズム
2.4 おわりに
第7章 小麦加工品
1 パン(食パン,菓子パン,冷凍パン生地)(貝沼 謙)
1.1 はじめに
1.2 パンの種類,製法と乳化剤に求められる機能
1.2.1 食パン
1.2.2 菓子パン
1.2.3 冷凍生地
1.3 代表的な製パン用乳化剤と機能
1.3.1 乳化剤による機械耐性改良
1.3.2 乳化剤によるパンの老化抑制
1.3.3 乳化剤の機能活用における留意点
2 麺(片平亮太)
2.1 はじめに
2.2 小麦粉製品とグルテン形成を主とした基本的な考え方
2.3 麺類の分類と製麺工程
2.4 製麺工程における条件と役割
2.5 喫食時の食感(麺質)における基本的な考え方
2.6 麺類に使用される食品添加物とその役割
2.7 製麺性の向上
2.7.1 試験例1
2.7.2 試験例2
2.8 麺質の向上
2.8.1 試験例3
2.8.2 試験例4
2.9 品質の保持
2.9.1 試験例5
2.10 まとめ
第8章 乳製品
1 アイスクリーム(竹塚真義)
1.1 はじめに
1.2 乳化剤(食品用界面活性剤)の効果
1.2.1 脂肪凝集への影響
1.2.2 保形性への影響
1.2.3 氷結晶への影響
1.3 アイスクリームの製造工程
1.4 製造条件とアイスクリームの品質
1.4.1 均質条件とフリージング条件の相互作用
1.4.2 フリージング条件とアイスクリームの品質
2 コーヒークリーム(宮部正明)
2.1 はじめに
2.2 コーヒークリームとは
2.3 コーヒークリームにおける油脂,タンパク質,乳化剤の役割
2.3.1 油脂
2.3.2 タンパク質
2.3.3 乳化剤
2.4 コーヒークリームの製造法
2.5 コーヒークリームの全体としての把握と今後の課題
3 ホイップクリーム(武藤高明)
3.1 ホイップクリームの種類と脂肪球界面
3.2 ホイップクリームに求められる特性と界面特性
3.2.1 流通・保存時の液状安定性と界面特性
3.2.2 ホイップ特性と界面特性
3.3 ホイップクリームにおける界面制御
3.3.1 ホイップクリームの界面構成成分に影響を及ぼす因子
3.4 今後の展望
4 チーズ(川﨑功博)
4.1 はじめに
4.2 ナチュラルチーズにおける成分間の相互作用と物性制御
4.2.1 牛乳中のカゼインと脂肪球の構造
4.2.2 レンネット反応とナチュラルチーズの組織形成
4.2.3 ナチュラルチーズにおける成分間の相互作用と物性の関係
4.3 プロセスチーズにおける成分間の相互作用と物性制御
4.3.1 溶融塩の作用とプロセスチーズの組織形成
4.3.2 プロセスチーズにおける成分間の相互作用と物性の関係
5 ヨーグルト(宮地一裕)
5.1 はじめに
5.2 脂肪の均質
5.3 カード均質
5.4 ホイップヨーグルトの製造技術
5.5 撥水容器
第9章 油脂製品
1 バター(塩田 誠)
1.1 バターの種類
1.2 製造方法
1.2.1 クリーム分離
1.2.2 エージング
1.2.3 チャーニング
1.2.4 ワーキング
1.2.5 発酵バターについて
1.3 チャーニングの理論
1.3.1 泡沫説
1.3.2 相転換説
1.4 乳脂肪の特徴
1.5 乳中脂質の存在状態について
1.6 バターの構造と物性
1.7 バターの乳化と品質
2 マーガリン,ファットスプレッド(田中礼央)
2.1 マーガリンの種類
2.2 マーガリン類の物性
2.3 マーガリン類の原料
2.4 マーガリン類の製造方法
2.4.1 混合乳化
2.4.2 急速冷却
2.4.3 錬圧
2.5 マーガリン類の乳化
2.6 油脂の結晶化とマーガリンの品質
2.7 近年の検討と粗大結晶モデル
第10章 菓子類
1 ビスケット類(寺田和典,井上琢也)
1.1 ビスケット類の分類と特徴
1.2 ビスケット類の乳化剤利用効果
1.2.1 乳化剤の作用
1.2.2 作業性の向上
1.2.3 品質改良
1.2.4 その他利用方法
2 キャンディー類(孫本康広)
2.1 はじめに
2.2 ハードキャンディー
2.3 ソフトキャンディー
2.4 錠菓
3 チョコレート(木田晴康)
3.1 はじめに
3.2 チョコレートの構造と製造プロセス
3.3 チョコレート用油脂の機能と分類
3.4 機能性油脂
3.4.1 ブルームの分類とその対策
3.4.2 特殊シード剤
3.4.3 口どけチョコ用油脂
3.4.4 ホイップチョコレート用油脂
3.4.5 含水チョコレート用油脂
3.5 おわりに
第11章 飲 料
1 嗜好飲料(井上孝司)
1.1 はじめに
1.2 製造工程および乳化装置
1.3 嗜好飲料における乳化安定性の劣化とその因子
1.4 乳化を安定化させる素材(界面制御に関わる素材)と微生物制御
1.5 自動販売機での販売と乳化安定
1.6 乳化評価技術
2 機能性飲料(黒川眞行)
2.1 はじめに
2.2 主な機能性成分
2.2.1 水溶性の機能性物質
2.2.2 水分散性の機能性物質
2.2.3 脂用性の機能性物質
2.3 応用例
2.3.1 例1:乳性飲料(殺菌乳酸菌飲料)
2.3.2 例2:大豆タンパク飲料
2.4 おわりに
第12章 調味料
1 ドレッシング・マヨネーズ(有泉雅弘)
1.1 はじめに
1.2 マヨネーズ・マヨネーズタイプ
1.2.1 マヨネーズとは
1.2.2 構造特性
1.2.3 安定性
1.2.4 機能付与
1.2.5 応用例
1.3 ドレッシング
1.4 おわりに
2 カレー・ホワイトソース(谷原 望)
2.1 はじめに
2.2 ホワイトソースの過加熱時の油分離防止
2.3 澱粉への作用
2.4 油脂の結晶コントロール
2.4.1 ソース中の油脂の結晶化防止
2.4.2 固形ルウのファットブルーム防止
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