杉本 榮一 (株)デンギケン 代表取締役社長 電気・電子材料研究会 会長
環境調和型クリーンエネルギーとして、太陽光発電システム(Photovoltaic System),燃料電池(水素発電システム),風力発電,バイオマスエネルギーなどの開発が世界的規模で推進されています。そのなかで、太陽光発電(PV)は実用化されてから30年以上が経過し、一時停滞していた市場が2009年後半から再び成長軌道に向けて力強く動き出しました。
太陽電池の世界市場は2030年には約30兆円になり、現在、低コスト高効率のための新しいセル技術の開発をはじめ、太陽光発電システム構成材料の性能アップとコスト圧縮がより一層求められています。
さらに、PVシステムは変圧器,遮断器,避雷器等と同様、屋外使用の静止電気機器であり、従って、モジュールの構成材料は機器絶縁システムを構成する電気絶縁材料の機能と特性が要求されます。
筆者は約10年間に亘り、関係会社の協力の下に太陽光発電システム構成材料の研究、開発とその製品化を推進して参りました。“作れば売れる時代は終わった。今後は技術力とコスト競争が課題”の時代を迎える事になります。
本書は、太陽光発電システムのモジュール構成材料を分析するとともに、モジュール全体像の開発動向,構成材料の現状,最新の市場動向および、それに対応したパネル構成の具体的開発状況に着目し、電気・電子材料研究会が編纂した以下の技術レポートの集大成を行うとともに、さらなる内容の見直しと充実を図って参りました。
現在、太陽光発電システムの分野で開発中の技術者や、今後、自社の独自なハード、および、ソフト技術を生かして本分野に新規参入を計画中の方に、多少なりとも参考になれば幸甚です。
①第1版「太陽電池パネル材開発の最前線2006」2005年12月2日刊
②第2版「太陽光発電システムパネル材用バックシート開発の最前線2007」2006年12月4日刊
③第3版「太陽電池パネル構成材料の開発最前線2007-Ⅱ」2007年5月21日刊
④第4版「太陽光発電システム構成材料の最前線2008」2007年12月10日刊
⑤第5版「太陽光発電システム構成材料最前線2009」2009年1月23日刊
⑥第6版「太陽光発電システム構成材料最前線2009-Ⅱ」2009年7月1日刊
2010年12月吉日
監修 杉本 榮一
太陽光発電システム構成材料技術総覧2011
はじめに
第1章 PVシステムの概要
1.1 太陽光発電の原理
1.2 太陽光発電(PV)システムと構成材料
第2章 太陽電池用セル材料
2.1 概要
2.2 シリコン
2.2.1 単結晶シリコン型
2.2.2 多結晶シリコン型
2.2.3 微結晶シリコン型
2.2.4 アモルファスシリコン型
2.2.5 薄膜シリコン型
2.2.6 ハイブリッド型(HIT型)
2.2.7 多接合型(タンデム型)
2.2.8 球状シリコン型
2.2.9 電界効果型
2.3 化合物系
2.3.1 GaAs系
2.3.2 CIS系(カルコパイライト系)
2.3.3 Cu2ZnSn系
2.3.4 CdTe-CdS系
2.3.5 その他
2.4 有機系
2.4.1 色素増感太陽電池
2.4.2 有機薄膜太陽電池
2.4.3 量子ドット型
2.5 各種太陽光発電セルの出力特性
第3章 太陽光発電システムパネル構成材料
3.1 電気機器絶縁システムからみたパネル材の機能
3.2 鉛フリーはんだ
3.2.1 鉛フリーはんだの種類
3.2.2 鉛フリーはんだ実装の現状
第4章 封止樹脂
4.1 はじめに
4.2 各社の封止材
4.2.1 三井化学ファブロ(株):“ソーラーエバ(SOLAREVA)”
4.2.1.1 ソーラーエバの銘柄と基本物性
4.2.1.2 代表的なソーラーモジュールの構成
4.2.1.3 代表的なソーラーモジュールの生産工程
4.2.1.4 ソーラーモジュールの製造条件例
4.2.1.5 ソーラーエバの架橋速度
4.2.1.6 ソーラーエバの長期物性
4.2.1.7 ソーラーエバの標準仕様
4.2.2 (株)クラレ:PVB(ポリビニルブチラール)フィルム
4.2.2.1 はじめに
4.2.2.2 PVBフィルム
4.2.2.3 PVB封止材使用の実用例とモジュール構成例
4.2.2.4 PVBフィルムの特長
4.2.2.5 PVBフィルムのラミネート
4.2.2.6 太陽電池PVBフィルムの開発
4.2.2.7 次世代PVBフィルム
4.2.2.8 バックシート系モジュールへの適応
4.2.3 三井・デュポン ポリケミカル(株):アイオノマー樹脂“ハイミラン”
4.2.3.1 アイオノマー樹脂“ハイミラン”とは
4.2.3.2 ハイミランESの特徴
4.2.3.3 ハイミランESとEVA封止材との比較
4.2.3.4 ハイミランESとEVA封止材との比較
4.2.3.5 封止材料の特性比較
4.3 まとめ
第5章 保護フィルム(バックシート)
5.1 太陽光発電システム・シリコンモジュール用保護フィルム(バックシート)
5.1.1 保護フィルム(バックシート)に要求される機能と特性
5.1.2 構成材料の品質特性
5.1.3 バックシート用基材の種類と特性
5.2 バックシート用耐熱フィルム
5.2.1 概要
5.2.2 フッ素樹脂フィルム
5.3 耐熱・低オリゴマータイプPETフィルムの特性
5.4 水蒸気バリアーフォルム(耐熱、耐湿性)
5.5 電気絶縁フィルム
5.6 透明PETフィルム
5.7 バックシート用接着剤
5.7.1 基本的特性評価
5.7.2 評価方法
5.7.3 代表的接着剤の試験結果
5.8 Bostic, Inc.接着剤
5.9 紫外線吸収剤
5.10 封止樹脂と保護フィルムの適合性評価
5.10.1 BSとEVAフィルム(汎用フィルム)と剥離力
5.10.2 Fast cure type EVAフィルムとBSの剥離力
第6章 太陽光発電量とバックシートの使用量
6.1 はじめに
6.2 太陽電池生産量(MW/年)とBS需要量
6.3 太陽光発電量とBS使用量の計算式
第7章 各社BSメーカーの製品群
7.1 リンテック(株)“Photomark Series”
7.1.1 製品構成および特長
7.2 (株)コバヤシ“コバテックPV”
7.2.1 コバテックPVの機能
7.2.2 コバテックPVの種類
7.2.3 製品規格
7.2.4 各種物性表
7.3 (株)電技研(電技研)“BACKVERR”
7.3.1 製品構成
7.3.2 特長
7.3.3 一般特性
7.3.4 電気特性の試験方法
7.4 世界のBSメーカー製品群の特性表
第8章 太陽光発電システムの回路電圧と電気絶縁設計
8.1 はじめに
8.2 太陽光発電セルの発生電圧および電流
8.3 太陽光発電システムの設置状況と回路電圧
8.4 太陽光発電システムモジュールの電絶縁設計
8.4.1 太陽光発電パネルの稼働時の事故・障害進展フロー
8.4.2 電気絶縁評価
8.5 発電モジュールの電気絶縁設計
8.5.1 電気絶縁設計の基本概要
8.5.2 充電部の隙間と放電電圧
8.5.3 太陽光発電モジュールの概略断面構造と電気絶縁の要点
第9章 電気絶縁材料の耐熱寿命と劣化要因
9.1 はじめに
9.2 耐熱性とその評価方法の分類
9.3 耐熱寿命予測の理論的基礎
9.4 フィルムの耐熱性について
第10章 PVモジュール用粘・接着テープ
10.1 PV用粘着テープの構成
10.2 特長
10.3 一般特性
10.4 信頼性評価試験
10.4.1 試験項目
10.4.2 試験方法
10.4.3 試験結果
10.5 特許・商標
10.6 PVモジュール端面シールテープ
10.6.1 PVモジュール端面シールの開発動向
10.6.2 発泡体両面粘着テープ
10.6.3 ポリウレタン発泡体
10.6.4 ポリエチレン発泡体
10.6.5 ブチルゴム発泡体
10.7 アクリル発泡体両面粘着テープ
10.7.1 構造
10.7.2 テープの特長
10.8 まとめ(課題と展望)
第11章 太陽電池モジュールの評価・試験・認証サービスの現状と動向
11.1.はじめに
11.2.太陽電池モジュールの認証規格
11.3.太陽電池モジュールの認証試験とTUV Rheinalandグループの経験
11.4.太陽電池モジュールの性能評価試験
11.5.コンポーネントの評価・試験および認証
11.6.太陽光発電に関わる評価・試験サービス
11.7.まとめ
第12章 太陽光発電システムの規格とバックシートと封止材の評価について
12.1.ケミトックスの業務紹介
12.2.太陽電池の規格
12.3.バックシートの試験・評価
12.4.封止材の試験・評価
第13章 PVシステム構成材料の特許
13.1 バックシートの信頼性評価法
13.2 太陽電池の保護材に関する特許
13.3 太陽電池の封止材に関する特許
13.4 太陽電池用保護材に関する特許
第14章 寄稿(Contribution)
「太陽光発電システム構成材料の水蒸気透過率および各種分析技術」((株)三井化学分析センター)
「高性能紫外線吸収剤と保護フィルムへの応用」((株)日本触媒)
「太陽電池バックシート用コーティング剤Zeffle GK」(ダイキン工業(株))
第15章 用語集
第16章 まとめ(課題と展望)
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