本レポートは「ZEV(ゼロ・エミッション自動車)とEV(電気自動車)電池テクノロジー」の技術と市場動向をテーマとして最近の動向を調査しまとめたものである。ZEVは、文字通り有害排気ガスを全く出さない自動車で、米国カリフォルニ州の当局(ARB)が年次目標を強化して進めているアイテムである。この規制の影響は大きく、その対応で2016年を起点に自動車開発は大きく変化している。また排ガス対策のEV化に止まらず、自動運転技術の開発が急速に進行しており、自動車の概念自体を変える動きになっている。
自動車の動力は最終的には電気自動車EV化やFCV(燃料電池自動車)が市場を支配するであろうが、市場で動き回る膨大な数の自動車を即座にEVやFCVに転換はできないことも確かなことである。移行期にさしかかった現在においては、EVが目的なのか手段なのか、ZEVが目的なのかあるいは環境改善のための手段なのか、自動車メーカー、行政、関係業界を含めて、関係者の捉え方や理解が異なりかなり振れている様に思われる。
日本はHV(ハイブリッド自動車)、PHVとEVを総合して、最も技術的に商業的に実績を積み上げて来た唯一の国である。一方、自動車王国の米国、歴史と伝統の欧州、そして都市環境の解決が急務な中国。米・欧・中のEVの技術レベルは、アナウンスの華やかさと別として、この2,3年のにわか造りとも見え、主にリチウムイオン電池の不備による発火事故が絶えない。しかしながら無理が通れば道理が引っ込む式のやり方も、数年後にその成果が実れば容認されることになろう。
リチウムイオン電池を創生し、その原材料と生産技術を作り上げて来た日本の関連業界にとって左記の“無理やり“プロセスの中で、振り回される事なく自らのビジネスを発展させて行くためには、情報を捉え、解析してアクションにつなげる必要があろう。電池設計、電池の安全性、寿命、コスト(原材料と製造)等々、その電池を搭載したEVを誰が乗るのか、EVメーカーが顧客として妥当性が見えているのか。(心配はきりがないが・・・)。
電池テクノロジーでは、異業種間あるいは国際的に、情報を理解するためには、用語、単位や規準が不統一でわかり難くい。またEV、PHVやHVのエネルギーコスト(燃費、電費)などが、相互比較ができ難い。本書では可能な限り数値で定量的に把握して、近い将来のアクションの参考になるように説明したつもりである。ZEV、EV電池の業務に関係する方々にお役に立てれば幸いである。
調査・執筆 菅原秀一
企画・編集 シーエムシー・リサーチ
第Ⅰ編 ZEV規制
第1章 ZEVと環境規制
第2章 ZEV関係政策と補助金
第3章 都市環境と地球環境、どちらが大事か重要か
第4章 試算のプロセスと石油事情、電力事情
第5章 用語解説と単位換算表
第6章 EV、PHVの電力消費Wh/km
第7章 ZEVのまとめ
-参考資料-
第Ⅱ編 EV電池テクノロジー
第1章 EVのリチウムイオン電池(セル)の多様化と集約化
第2章 EVセルの性能と課題、容量、出力とサイクル寿命
第3章 EVセル&モジュールの安全性、試験規格と事故対応
第4章 EV、PHVの搭載電池システム、事例とバリエーション
第5章 EV、PHVとHVの環境性能、理想と現状
第6章 EVの走行とエネルギーコスト、燃費と電費
第7章 電池材料1(正・負極剤の特性と特徴)
第8章 電池材料2(セパレータ、バインダーほか)
第9章 電池材料3(電解液、電解質、リチウム素原料)
第10章 EVセルのコストとコストダウン、現状とブレークスルー
第11章 ポストリチウムイオン電池、研究シーズと実用ニーズ
-文献・資料一覧-