井上國世 京都大学名誉教授
伊藤圭祐 静岡県立大学
寺田祐子 静岡県立大学
河原崎泰昌 静岡県立大学
伊福伸介 鳥取大学
村上 洋 大阪産業技術研究所
桐生高明 大阪産業技術研究所
木曽太郎 大阪産業技術研究所
中野博文 園田学園女子大学
野村幸弘 野村食品技術士事務所
大日向耕作 京都大学
寺田喜信 江崎グリコ㈱
森本康一 近畿大学
國井沙織 近畿大学
星 由紀子 天野エンザイム㈱
成田優作 UCC上島珈琲㈱
岩井和也 UCC上島珈琲㈱
福永泰司 UCC上島珈琲㈱
清水英寿 島根大学
古林万木夫 ヒガシマル醤油㈱
野口智弘 東京農業大学
桝田哲哉 京都大学
松井健二 山口大学
望月智史 山口大学
田尾龍太郎 京都大学
飛松裕基 京都大学
根来誠司 兵庫県立大学
武尾正弘 兵庫県立大学
柴田直樹 兵庫県立大学
樋口芳樹 兵庫県立大学
加藤太一郎 鹿児島大学
重田育照 筑波大学
手島裕文 名古屋大学
加藤まなみ 名古屋大学
辰川英樹 名古屋大学
人見清隆 名古屋大学
三間穣治 大阪大学
赤松美紀 京都大学
神戸大朋 京都大学
高橋典子 星薬科大学
河田悦和 (国研)産業技術総合研究所
盤若明日香 大阪ガス㈱
西村 拓 大阪ガス㈱
松下 功 大阪ガス㈱
坪田 潤 大阪ガス㈱
杉森大助 福島大学
五味恵子 キッコーマン㈱
倉田淳志 近畿大学
岸本憲明 近畿大学
酵素の応用分野は「産業用」と「医薬製造および研究用」に大別される。産業用では、まず食品分野で糖化工業,デンプン加工,タンパク質加工、製パン、乳製品などがある。食品以外では、洗剤、飼料、繊維、皮革、製紙、燃料エタノール製造、汚水処理、化学工業触媒などを挙げることができる。また、ヒトの長寿高齢化や健康志向により各種サプリメントの製造への応用やペットフーズの製造への応用もある。
一方、医薬・研究酵素は、酵素そのものが医薬品原体として利用される場合があり,診断薬や診断キットとして利用される場合もある。また、研究試薬として利用される場合もある
本書は酵素の最新の研究開発動向と様々な応用をまとめた。酵素と応用製品に携わるメーカーや大学・研究機関の方々、食品、バイオ、医薬、医療関連の方々に本書をお勧めいたします。
【Ⅰ 総論編】
第1章 総論:酵素の産業応用に関する最近の話題
1 酵素応用の現状と課題
1. 1 酵素応用の動向
1. 2 世界の産業酵素市場
1. 3 日本の産業酵素市場
2 注目すべきトピックス
2. 1 新規な酵素分類EC7(トランスロカーゼ)が新設された
2. 2 地盤改良技術およびバイオミネラリゼーション
2. 3 プラスチックごみとマイクロプラスチックの問題
2. 4 プラスチックを分解する酵素
2. 5 食品添加物と腸内細菌
【Ⅱ 食品産業への酵素応用編】
第1章 合成ペプチドライブラリーと組み換え酵素を用いた機能性ペプチドの探索
1 はじめに
1. 1 機能性食品ペプチド
1. 2 機能性ペプチドの探索
2 ジペプチジルペプチダーゼⅣ(DPP-Ⅳ)
2. 1 DPP-Ⅳの阻害
2. 2 DPP-Ⅳの種差
2. 3 阻害剤探索への組み換えhDPP-Ⅳの利用
2. 4 食品由来のhDPP-Ⅳ阻害ペプチド探索の問題点
3 hDPP-Ⅳ阻害ペプチドの探索
3. 1 ジペプチドのhDPP-Ⅳ阻害効果
3. 2 hDPP-Ⅳ阻害ジペプチドの網羅的解析
3. 3 コンベンショナルアプローチにより見いだされてきたhDPP-Ⅳ阻害ペプチドとの比較
3. 4 合成ペプチドライブラリーの網羅的解析データを用いた茶殻由来hDPP-Ⅳ阻害ペプチドの探索
4 まとめ
第2章 カニ殻由来キチンナノファイバーの製造と食品分野への応用
1 はじめに
2 カニ殻由来の新素材「キチンナノファイバー」
3 部分脱アセチル化キチンナノファイバー
4 キチンナノファイバーの服用に伴う効果
4. 1 服用に伴う腸管の炎症抑制
4. 2 服用に伴う抗肥満効果
4. 3 服用に伴う血中コレステロール値の軽減効果
4. 4 服用に伴う血中代謝産物に及ぼす影響
4. 5 服用に伴う腸内環境に及ぼす影響
5 おわりに
第3章 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来乳糖酸化酵素を用いたラクトビオン酸カルシウムの生産
1 はじめに
2 乳糖酸化活性を有する酵素
3 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来乳糖酸化酵素の性質
4 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来酵素および市販ヘキソースオキシダーゼ酵素剤の
比較
5 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来酵素による乳糖からラクトビオン酸への変換
6 固定化酵素を用いたラクトビオン酸の生産
7 その他のアルドースのアルドン酸への酵素的変換
8 おわりに
第4章 食品製造時における酵素による品質劣化への対応
1 はじめに
2 食品の品質に関与する酵素群
2. 1 物性の変化に関与する酵素
2. 2 呈味性の消失や不快臭の発生に関与する酵素
3 おわりに
第5章 超高齢社会に挑む食の先端科学~新しい認知機能改善および血管拡張ペプチドの発見~
1 はじめに
2 末梢環境に注目した認知機能低下の予防戦略
2. 1 脳も臓器のひとつである-多臓器円環-
2. 2 糖尿病は認知症の危険因子である
2. 3 短期間の高脂肪食摂取により認知機能が低下する
2. 4 新しい認知機能改善ペプチドの発見
3 老化の実体解明
3. 1 生体の外部環境のシグナル受容,伝達および情報統合
3. 2 ジペプチドライブラリーを用いた血管老化の実体解明
3. 3 老齢ラットにおいて血圧降下作用を示すペプチドの解明
3. 4 CCKを標的とした降圧ペプチドの探索と酵素利用によるペプチド生産
4 今後の展望
第6章 酵素合成多糖(酵素合成グリコーゲン,酵素合成アミロース)の機能性と応用
1 はじめに
2 糖転移酵素による多糖類の合成
2. 1 酵素合成アミロース
2. 2 酵素合成グリコーゲン
3 酵素合成グリコーゲンの機能
3. 1 免疫賦活機能
3. 2 その他の機能
4 酵素合成アミロースの機能
4. 1 包接機能
4. 2 酵素合成アミロース含有繊維(アミセル®)
5 おわりに
第7章 コラーゲン酵素分解物の再生医療および食品科学への応用
1 はじめに
2 コラーゲンの安全性
3 動物由来コラーゲンの抗原性
4 生体に埋植されるコラーゲン
5 LASColを用いた接着型3次元スフェロイドの形成と応用
6 LASCol線維の観察
7 LASColの粘度と細胞培養条件でのLASColゲルの硬さ
8 まとめ
第8章 マルトトリオシル転移酵素の開発,反応機構,および澱粉加工への応用
1 糖転移酵素とは
2 グライコトランスフェラーゼ「アマノ」とは
3 酵素化学的性質と構造
4 グライコトランスフェラーゼ「アマノ」の用途
5 おわりに
第9章 コーヒーにおけるアクリルアミド低減への取り組み
1 はじめに
2 アスパラギナーゼを用いたAAの低減
3 システインを用いた缶コーヒー中のAAの低減
4 セルフクローニング麹菌を用いた缶コーヒー中のAAの低減
5 おわりに
第10章 食品タンパク質由来代謝産物インドール系化合物の産生機構および病態発症・進
展への関与〜慢性腎不全の発症・進展メカニズムを中心に〜
1 はじめに
1. 1 慢性腎不全と透析治療
1. 2 慢性腎不全の発症・進展要因とその対処療法
2 腎機能とトリプトファン由来代謝産物インドール系化合物
2. 1 インドール
2. 2 インドキシル硫酸
2. 3 腎臓に対するインドキシル硫酸の作用メカニズム
3 インドキシル硫酸に着目した腎機能改善に対する機能性食品成分の可能性
4 健常者の腎機能に対する高タンパク質摂取の影響
5 おわりに
第11章 醤油醸造における原料分解と健康機能性の発現
1 はじめに
2 醤油の醸造工程
3 醤油醸造における原料たんぱく質の分解
3. 1 小麦アレルゲンの分解機構
3. 2 大豆アレルゲンの分解・除去機構
4 醤油醸造における原料糖質の分解
4. 1 SPSの抗アレルギー作用
4. 2 SPSの鉄分吸収促進作用
4. 3 SPSの中性脂肪低下作用
5 おわりに
第12章 タンパク質架橋酵素(プロテインジスルフィドイソメラーゼ)の機能解析および
小麦粉生地,製パン性に対する応用
1 はじめに
2 小麦生地形成とジスルフィド結合
3 小麦粉生地と酸化
4 小麦粉生地中のSS結合形成と酵素
5 製パン性とPDI
6 製パンにおけるアスコルビン酸の関与
7 おわりに
第13章 甘味発現の分子機構と甘味タンパク質への応用
1 はじめに
2 味の分類と基本味
2. 1 味の分類と表現
2. 2 味の正四面体理論と基本5味
3 甘味物質の特徴
3. 1 糖類
3. 2 アミノ酸
3. 3 高甘味度甘味料
3. 4 甘味タンパク質
4 甘味物質の共通構造
4. 1 甘味物質のAH-B,AH-B-Xモデル
4. 2 甘味タンパク質にSweet fingerは存在するか
5 甘味受容体と甘味物質との応答特性
5. 1 甘味受容体
5. 2 低分子甘味物質の甘味受容体応答部位の探索
5. 3 甘味タンパク質の甘味受容体応答部位の探索
5. 4 受容体ドッキングモデルを用いた甘味タンパク質の高甘味度化
6 おわりに
【Ⅲ バイオ産業への酵素応用編】
第1章 植物の脂質/脂肪酸から酸素添加反応を経て生成される代謝物群(オキシリピン)
とその生合成酵素
1 はじめに
2 みどりの香りの生理生態学的役割
3 食品フレーバーとしてのみどりの香り
4 みどりの香り生合成経路
5 リポキシゲナーゼ
6 ヒドロペルオキシドリアーゼとその関連酵素
7 結語
第2章 バラ科サクラ属果樹類におけるS-RNase依存性配偶体型自家不和合性
1 はじめに
2 自家不和合性の分類と遺伝制御
3 S-RNase依存性配偶体型自家不和合性における認識反応特異性の決定因子
4 ナス科,オオバコ科,バラ科リンゴ亜連における協調的非自己認識モデル
5 バラ科サクラ属にみられる花粉側自家和合性変異型Sハプロタイプ
6 バラ科サクラ属における競合的相互作用の欠如
7 バラ科サクラ属におけるジェネラルインヒビターモデル
8 バラ科サクラ属に特異な自家不和合性認識機構に基づいた効果的な自家和合性育種法
9 おわりに
第3章 リグニンの構造多様性とバイオマス利用に向けた代謝工学
1 はじめに
2 リグニンの生合成と構造
2. 1 ケイ皮酸モノリグノール経路を介したリグニンモノマーの合成
2. 2 脱水素重合による高分子リグニンの生成
2. 3 リグニンの構造多様性
3 代謝工学によるリグニンの構造改変
3. 1 天然リグニンモノマー組成の制御
3. 2 非天然型リグニンモノマーの導入
4 おわりに
第4章 ナイロン分解酵素NylBの構造進化,触媒機構とアミド合成への応用
1 はじめに
2 ナイロン分解酵素遺伝子群のゲノム構造
3 NylBの立体構造と触媒機構
4 ナイロン分解酵素の進化
5 加水分解の逆反応によるアミド合成:酵素の内部平衡に影響を与える変異
6 終わりに
第5章 皮膚表皮形成を司るタンパク質架橋化酵素・トランスグルタミナーゼ
1 トランスグルタミナーゼとは
2 表皮形成のしくみ
2. 1 表皮の構造と形成機構
2. 2 分化を再現する表皮培養系
3 TGaseによる表皮の架橋化
3. 1 表皮分化におけるTGaseの役割
3. 2 高反応性基質ペプチドによるTGase酵素活性の可視化
4 モデル生物としてのメダカの表皮におけるTGase
第6章 ヒトRabファミリー低分子量Gタンパク質に内在する細胞内膜テザリング活性の試験管内再構成
1 真核細胞の物質輸送を担う仕組み:細胞内膜交通・小胞輸送(メンブレントラフィック)
2 どのようにRabファミリー低分子量Gタンパク質は膜テザリング反応に関与し,選択的な細胞内膜交通・小胞輸送に貢献しているのか?
3 ヒトRabファミリー低分子量Gタンパク質が駆動する膜テザリング反応の試験管内再構成
第7章 薬物排出に関わるヒトP糖タンパク質の輸送基質認識機構―輸送基質の構造とATPase活性および構造活性相関
1 はじめに
2 さまざまな農薬のP-gp-ATPase活性
3 テブフェノジド類縁体の構造とキニジン輸送阻害活性との相関関係
4 テブフェノジド類縁体とP-gpとのドッキングシミュレーション
5 P-gpによる輸送基質の認識機構
6 おわりに
第8章 亜鉛トランスポーターを介したエクト型亜鉛要求性酵素の活性化
1 はじめに
2 早期分泌経路に局在するZNTファミリー亜鉛トランスポーター
3 エクト型亜鉛要求性酵素
4 エクト型亜鉛要求性酵素の活性化
5 エクト型亜鉛要求性酵素の活性化におけるZNT5-ZNT6ヘテロ二量体とZNT7ホモ二量体の役割の普遍性
6 ZNT5-ZNT6ヘテロ二量体とZNT7ホモ二量体への細胞質亜鉛の受け渡し
7 おわりに
第9章 ビタミンAの抗癌作用メカニズムと翻訳後修飾反応レチノイル化
1 ビタミンA
2 ビタミンAの抗癌作用
2. 1 RA
2. 2 ROH
3 ビタミンAによるタンパク質修飾反応
3. 1 レチナール
3. 2 RA
4 RAにより誘導されるHL60細胞分化とレチノイル化タンパク質
5 おわりに
第10章 3-ヒドロキシ酪酸の発酵生産法の開発,生理的機能および応用
1 はじめに
2 3-ヒドロキシ酪酸の発酵生産
3 3HBをエネルギー源として利用する利点,ヒトでの応用について
4 3HBの機能に注目した将来の可能性について
5 将来
第11章 ホスホリパーゼの構造,作用および応用
1 はじめに
2 ホスホリパーゼの構造と触媒機能
2. 1 ホスホリパーゼA1
2. 2 ホスホリパーゼA2
2. 3 ホスホリパーゼC
2. 4 ホスホリパーゼD
第12章 フルクトシルペプチドオキシダーゼを用いた糖尿病診断法の進展
1 HbA1c測定法
2 FPOXの探索
3 FPOXのクローニング
4 FPOXを用いたHbA1c測定法の確立
5 FPOXの安定性向上
6 FPOXのデヒドロゲナーゼ化
第13章 イオン液体と微生物・酵素の利用技術の開発
1 はじめに
2 IL耐性菌の探索
3 IL耐性プロテアーゼの特徴
4 細菌のIL耐性
5 ILの分解性
6 ILを溶媒に用いた酵素合成
6. 1 はじめに
6. 2 5-CQA-Meからカフェ酸エステル類の酵素合成
6. 3 リパーゼを用いた4-および5-CQA-Meとカフェ酸ビニルエステル(VC)から3,4-および4,5-DCQA-Meへの変換
7 おわりに